穴山用水堰
穴山用水堰とは
穴山用水堰は、胆沢川の馬留橋下に取水口があり、市野々、萱刈窪を経由して前沢の白鳥川に通水するために開削された用水堰と言われている。総延長約18キロメートル、そのうち約3キロメートルは途中300メートルほどの平堰部分のほか、全てトンネル状の「穴堰」とされる。
穴の規模は幅1.2メートルから1.3メートル、高さ0.5メートルから1.5メートルほどで、腰をかがめて通れるほどの場所もあれば、這わなければ通れないような場所もある。
平成10年(1998)6月16日から8月24日まで岩手県埋蔵文化財センターは、当時の建設省胆沢ダム工事事務所の委託を受けてダム建設によって失われる取水口より、2,500平方メートルの区間の発掘調査を行った。その結果、七左エ門、昭和穴、石積10ヶ所、水門1ヶ所、余水吐4ヶ所、平堰1ヶ所などが見つかった。
一般的な穴堰が、岩盤を穿って水路を掘っているのに対し、「穴山用水堰」の場合は、岩盤の上の礫層部を通っていることが特徴である。このため、水路の高低は地形に合せて、折れ線グラフのようになっている。
折れ線グラフ状の谷底位置には横穴が設けられている。これを「横番」と呼び、開削の際の作業坑である。穴堰の完成後は、その横穴(斜坑、水平坑の違いもある)は土砂を取り除くために使用される。すなわち、通水時には塞いでおいて、水の流れが悪くなるとその穴を開き、水勢を利用して堆積物を吐き出させるというわけである。
穴山坑道内部の壁面には、半皿状の窪みが所々にあり、照明用の菜種油などを灯したと見られるものや、ノミを当てた痕跡なども残されている。