寿庵の魔法
胆沢扇状地の伝説(その4)
寿庵の魔法
寿庵は、人夫を使って堰を掘ったども、お金がなくなったそうだね。そうしたら、寿庵という人は魔法を使うんだってね。昔は穴のあいたお金に糸を通して、百とか五十とか、まとめたお金はそうして使ったそうだけれども、寿庵は、粟の穂を(息を吹きかけるしぐさで)魔法でお金に化けさせ、それを人夫に払ったものなんだって、人夫は化けたお金を持って買い物をする。次ぎ、次ぎと三人目に渡るまでは、化けたお金になっていたけれども、四人目の人に渡った時、魔法がとけて、もとの粟の穂になってしまった。皆んなにわかられた時には、寿庵はもう姿を消していたんだって。
この話は、寿庵堰の水利議員をしていたお爺さんから聴いた話だそうで、話者は明治41年(1908)生まれであったから、祖父の話は江戸末期にはあったものであろう。